韓国の高校生は先生と親しくなっても必ず丁寧な敬語で話す /敬語使用意識の日韓対照研究
目次
敬語の度合いと相手との心理的距離感に相関について
日本語の敬語は、相手との心理的な距離感を表現する役割もしているため、親しみの表現として少しずつ敬語がゆるくなっていくことがあります。反面、韓国語の敬語は、すでに関係性が固定された上下関係を基準にするため、相手とどんなに仲良くなっても尊敬語を使いづづけるというのが一般的な認識です。
今回は、日本と韓国の高校生が学校の先生と話す時、その先生と親しいか親しくないかでどのように言葉遣いが変わるのかを具体的に調査してみた論文を紹介します。
共有する論文:ホン・ミンピョ「敬語使用意識の日韓対照研究ー教師に対した親疎度を中心に」
敬語の使い方に男女差が?
この論文は、日韓の敬語意識の中でも、日本人は上下関係よりも個人的にその人と親しいかを重視し、韓国人は親疎関係よりは上下関係を重視するという仮説を立てて、実態調査を行いました。そして、調査結果をもとに、日本語学習者に対した敬語教育に活用しようとしました。
調査は、2010年12月から2011年6月の間に、ソウルとテグ、大阪の高校生を対象に集団調査の形式で行われました。調査内容は、学校生活で生徒が教師へ使うとされる疑問文、勧誘文、挨拶、自称詞の4つの類型に限定しました。
調査の結果、次のことが明らかになりました。
話者の性別を表す日本語を含めた分析をどうするか
韓国語でも日本語ほどではないものの、親しい相手には柔らかい表現が使おうとする傾向があることが分かったのは、学習者も参考になる点だと思います。今回は、高校生が話す時を想定した調査なので、比較的若い人の傾向だと捉えることもできます。
社会人のような年齢が上がっても同様の傾向があるのか、世代差が気になるところです。
あと、挨拶に関した調査で、日本側に「おす」を使う男子学生が「おはよう」を使う女子学生より割合が多いという結果がでました。これに関して、「おす」自体が主に男性が先輩に軽く挨拶する時によく使われますが、「おはよう」は男女差なくクラスメイト同士や先生が生徒に使うイメージがあります。
そのため、日本語話者の立場からすると、「おす」を選択する男子学生が女子学生より多くなるのは当然のことだし、「おす」と「おはよう」が男女で対照になる言葉として分析できるのか、やや疑問が残ります。日本語には一般的に男性が使う語彙、女性が使う語彙が多くあるのに対し、相対的に韓国語は、話者の性別は語彙に現れにくいという点が分析を複雑にする可能性があると思いました。
参照論文
ホン・ミンピョ「敬語使用意識の日韓対照研究ー教師に対した親疎度を中心に」『日本文化研究』第42集、東アジア日本学会、2012年、pp.613 - 634
홍민표 「경어사용의식의 한일 대조 연구-교사에 대한 친소도를 중심으로」『 日本文化硏究』 第42輯 , 동아시아일본학회, 2012년, pp.613 - 634
2022年1月25日note記事を修正、再投稿.
*1:pp.632-633