日韓の文系論文を読む人

読んだそばから忘れるので……

韓国語の‘~는데’を乱用してない?どういう時に使うのかを整理してみよう /韓国語教育のための連結語尾‘-는데’の意味研究

目次

 

意味が広くて分かりにくい文法‘~는데’

ネイティブもよく使い、一度覚えてしまえば使い勝手がいい「-는데」の文法は、日常会話でも文章にも使える便利な表現です。しかし意味が広範囲に渡るので、慣れるまでは前後の文脈から-는데の意味を考えないとないといけない難しさもあります。

 

今回は、日常会話で使われる-는데の意味を整理して、どの順番で意味を覚えていくと効率的なのかを研究した論文を紹介します。

 

共有する論文:イ・ヒジョン「韓国語教育のための連結語尾‘-는데’の意味研究:日常会話とコーパスに表れた-는데を中心に」

 

는데の前の節にはどんな内容が来るのか

-는데は、韓国語教育の教材で、「背景、状況」「対立、譲歩」の意味で提示される場合が多く、「背景、状況」の場合はその意味の範囲が広範囲になり、教材ごとに区分の仕方に差が見られます。

 

学習者がこの-는데をうまく使えない原因として、

①前の用言ごとに活用が異なる点、

②文脈によっていろいろな意味で使われる点 などが考えられます。


また、教育現場の問題点として、この-는데の前の節と後ろの節にどんな内容が来るのかを具体的に提示できなかった部分が大きいと考えられます。


したがって、学習者が会話の脈絡に合うように-는데を使えるようにするためには、前後の節にはそれぞれどんな内容が来るのかを具体的に提示することが必要です

 

この研究では、実際の会話上に表れた-는데の意味と使用の様子を調べて、文法教授の基礎資料を作っていこうとしています。

 

先行研究を整理すると、次のように-는데の意味を説明していることがわかります。

 

①「背景、状況」の詳しい意味になる「ある事実を紹介したり後ろに続く具体的な内容展開のために、先に提示する」から、前の節と何の関連が無い状況が後ろの節から発生するこという意味と区別しているパターン。

②「背景、状況」の詳しい意味になる「ある事実を紹介したり後ろに続く具体的な内容展開のために、先に提示する」を「聞き手が後ろの節の内容を受け入れやすいように、話し手が前の節にその背景を提示する」ことと「前の節で対象やテーマになるような基本的情報が提示され、後ろの節で細かい情報や説明を付け足す」ことに分けるパターン

③「対照」の意味を1つの意味として分類しないで、「背景、状況」の意味の二次的意味とするパターン

④「対照」と「譲歩」の意味を分離するパターン

 

これまでの先行研究は分析が文語中心で行われたため、実際の日常会話に表れる-는데の使われ方まで研究が及んでいないという点があります。そこで、この研究では口語で使われる-는데を中心に、意味と使用の様子を調べました。

 

調査の結果、次のことが明らかになりました。

 

①日常会話において、-는데は「情報の説明に先立つその背景、または状況の提示」と「対照される内容に先立つその背景、または状況の提示」での意味が最も頻繫に使われている。

②日常会話で、話し手は自分が新たに知った事実や雰囲気を伝えるより先にその背景や状況を提示する時に-는데を使う。この意味を頻度の側面と比較的明確に伝えることができる学習の容易性の側面から見ると、現場で意味のある活用になれると考えられる。

③前の節の背景・状況が維持されたまま後ろの節に対照される情報を説明する-는데の意味をより強調して教えるべきと考えられる。

後ろの節の事態の根拠になる背景や状況の提示として分析した-는데は、根拠を提示した後、主張したり批判や評価をする機能と一緒に使われ、討論の場だけでなく日常会話でも少なくない頻度で使われている。 *1

 

論文は、このような結果を考慮して、以下の順番で学習者が-는데を学習できるように提示することを提案しました。

 

情報説明に先立って、その背景や状況を提示する使い方

命令、提案や質問より先にその背景や状況を提示する使い方

対照される内容説明の前にその背景や状況を提示。または、期待外れの内容説明の前にその背景や状況を提示する使い方

④後ろの節にくる、ある事態の話より先に時空間的背景や状況を提示する使い方

⑤後ろの節にくる、ある事態の根拠になる背景や状況を提示する使い方 *2

 

最後に論文の筆者は、分析した用例が十分でなかったとし、今後はより多くの資料を集めて内容を補完することを課題としました。

 

는데を乱用してないだろうか?

いろんな意味に対応しているので、는데は前後の文章を繋げたいときに多用しがちだと思います。ネイティブもよく使うので、初級でも一気にちょっとこなれた感じになります。

 

だから私も、例えば하지만などの別の文法を使おうとするけど迷った結果、는데を使って、気が付いたら長くて何が言いたいのか分からない文章になったことがあります。文末をごまかしたい時にも는데は便利です。

 

しかし使いすぎると、日本語で言えばやたらと「~けど…なんですけどー……」のような口調になって、くどくなってしまう危険があります。今回の論文を読んでみて、私は意外と話の文脈の前後を意識せずに使っていているかもと反省しました。あらためて他の文法でも言い換えられないかを意識したり、文章を区切ってから続けてみたりするのがいいと思いました。

 

参照論文

イ・ヒジョン「韓国語教育のための連結語尾‘-는데’の意味研究:日常会話とコーパスに表れた-는데を中心に」『文化と融合』vol.43, no.2、韓国文化融合学会、2021年、pp. 417-436

이희정 한국어교육을 위한 연결어미 ‘-는데’의 의미 연구 : 일상대화 말뭉치에 나타난 ‘-는데’를 중심으로 문화와 융합 vol.43, no.2 한국문화융합학회 2021 pp. 417-436

www.kci.go.kr

2022年1月25日note記事を修正、再投稿.

*1:pp.431-432

*2:p.433