いつでもどこでも学習できるゲームアプリの開発/韓国語語彙学習のためのモバイルゲームアプリの設計提案
スマートフォンを活用した学習
机に向かって本を広げるだけが勉強ではありませんよね。むしろ、本を見ているだけでは補え切れないスピーキングや体験的な文化学習をできるようになることが、ゲームを使った学習に期待できることだと思います。
今回は、スマートフォンを生活に欠かせないほど日常的に活用している若い世代を対象とした学習ゲームアプリを、実際に韓国語学習者に聞き取り調査をしてデザインしてみた論文を共有します。
共有する論文 ジョン・ダソム 他2人「韓国語語彙学習のためのモバイルゲームアプリの設計提案」
どんなゲームなら効果的なの?
この論文の目的は、韓国語教育において、語彙学習の手助けになる教育用モバイルゲームアプリ開発のための設計、並びに開発方案を提案するところにあります。筆者は、これまでのオンライン学習に対して、以下の疑問点があるとしています。
デジタルネイティブの学習者は、好きなコンテンツで、自発的に学習した知識と情報を共有しようとする欲求が高く、時間と場所にこだわらずに、どこでも韓国語を学習できる方法を好む傾向があります。このような学習者にとって、モバイルアプリの活用は有効的方法だといえます。
先行研究では、大きく分けて2種類の方向性が見られます。
しかしながら、継続的な研究が行われておらず、モバイルアプリ活用の重要性を認識していながらも、実質的に現場に適用可能なアプリ開発に対した研究が不足している現状です。
実際に、韓国語学習者がどのような学習アプリを求めているのかについて調査した結果、モバイルアプリ教材に、聴解、発話、語彙の言語能力が向上することを期待していることが明らかになりました。
また、どのようなゲームを求めているかについて調査したところ、感覚的で実感のあるグラフィック、韓国文化と関連がある内容であることも分かりました。これらの調査結果から、学習者の没入感を高めるように様々なコンテンツを含んだ感覚的なデザインが必要であることが分かりました。
論文は、語彙学習用アプリは、学習者が自発的に学習を進め、双方向の学習が成り立つように、かつ、達成感を感じられるような構成であるべきだとして、ゲームアプリ「한국어 나들이」をデザインしてみました。
筆者は結論として、より効果的な韓国語学習のための語彙教育用アプリゲームを開発、活用することについて以下のような教育的提案を挙げました。
最後に筆者は、研究の反省点として、作ったモデルを実際に運用してみてそれを評価することができなかったことを挙げました。実際に運用してみて明らかになった問題点を修正する過程が必要であり、この点を今後の課題としました。
ゲームの効果
この論文は、学習者の声をもとに開発案を作ったことが特徴だと思います。学習の補助的な役割でゲームを活用する方法は、韓国語教育でも実際に運営されています。学習者が求めるゲーム内容について、韓国文化と関連がある内容が挙がりました。
この点については、私も共感できます。
教材に登場する韓国文化といえば、伝統文化や礼節が中心になります。しかしながら、多くの学習者は、今の韓国人は何をして何を食べて何を考えているかに興味があると思います。
全ての学習者が留学できるわけではないし、留学先によってもその土地の文化と教材が提示する文化が異なることもあり、全てを体験できるわけではありません。また、学習者は韓国に来たとしても、外国人として生活します。特に礼節などは、現地の人とかなり親しくならないと体験するきっかけがありません。
個人的には、プレーヤーをあえて韓国人に設定して、韓国人としての日常的な韓国生活を疑似体験できるゲームがあったとしたら、留学生活の文化体験と差別化できて面白いのではないかなと思います。
参考論文
ジョン・ダソム、ユ・スンオク、グォン・スンヒ「韓国語語彙学習のためのモバイルゲームアプリの設計提案」『青藍語文教育』76巻、青藍語文教育学会、2020年、pp.235-276
정다솜, 유승옥,권순희 「 한국어 어휘 학습을 위한 모바일 게임 설계 제안」 『청람어문교육』 76권、 청람어문교육학회 、2020년、 pp.235-276