日韓の文系論文を読む人

読んだそばから忘れるので……

海外のニュース記事にはどのくらいの翻訳ミスがあるのか /日本語ニュースサイトの韓国語翻訳の誤謬様相に関する考察

 

翻訳されたニュース原稿

今日はインターネットを中心に、日本にいながら海外のニュースもリアルタイムで見ることができ、反対に日本のニュースもすぐに外国語に翻訳されて広がる時代です。私たちはその翻訳されたニュースを通して、世界の情勢を知ることとができます。


今回は、その翻訳がどのくらい正確なのかを調査した論文を共有します。

共有する論文:李由雅、曹知恩「日本語ニュースサイトの韓国語翻訳の誤謬様相に関する考察 -共同通信(KYODO NEWS)韓国語翻訳版を中心に-」

 

ニュース記事の誤訳と原因分析

この論文は、日本語のニュース記事の韓国語に翻訳した記事中の誤訳を分析して、その実態を体系化することで、誤訳を最小化させることを目的としています。

 

分析する記事は、共同通信社の韓国語版ニュースのうち、2016年6月21日から7月11日までに掲載された50件の記事です。

通訳や翻訳を学ぶ学生は、新聞記事を言語学習に活用する道具でもあるため、論文では、翻訳学習の観点から調査しました。探し出した誤訳を原因ごとに分類した結果、以下の4通りあることが明らかになりました。

 

➀記号を含む表記上の誤訳
②専門用語に対する理解不足による誤訳
③語彙と文章に対する理解不足による誤訳
④熟語と日本語表現の直訳による誤訳  *1

 

論文では、上記の各原因に対して以下のように改善策を提示しました。

 

➀表記上の問題
→可読性に大きな支障はないものの、ケアレスミスになるため防ぐことが可能

②専門用語の問題
→インターネット検索を活用し、時代に合った表現を把握する

③語彙と文章理解の問題
→日本語の連体形は韓国語に翻訳する際、現在形にも未来形にも翻訳できるため、原文の意味を正確に把握する

④直訳の問題
→同じ漢字を使っても意味が異なる場合も多いため、ひとつひとつ確認する *2

 

最後に論文の筆者は、分析した50件の記事のうち、誤訳がひとつも無かった記事はほとんどなかったとし、報道としての信ぴょう性と正確性を確保するように強調しました。また、可能であれば、掲載前にネイティブスピーカーによる監修を経て、より正確な翻訳文にするべきだと述べました。

 

正確さと早さの両立

信ぴょう性と正確性の確保だけでなく、迅速な公開も求められる報道記事を翻訳することは時間との闘いになると思います。この論文で注目すべき点は、分析した翻訳記事のうち正確に翻訳された記事がほとんど無かった点です。


論文の筆者も述べているように、通訳や翻訳を中心にした語学学習で活用されやすいのが報道記事です。きちんとした文章が書かれている媒体の代表的なものであるため、選ばれることが多いのですが、今回は、翻訳の勉強として活用するのに適切かどうかの疑問が提示されました。

 

誤訳の原因を分析した結果、原文を正確に把握できていなかったり単語の意味の確認が足りなかったりしたことによって起きていることが分かりました。報道記事は、正確性と迅速な公開の両方がなければなりません。おそらく、迅速さを優先した結果、正確性が落ちてしまっているのではないかと思います。これについては、翻訳から公開までの流れの仕組みが改善されることを期待します。

 

参照論文

李由雅、曹知恩「日本語ニュースサイトの韓国語翻訳の誤謬様相に関する考察 -共同通信(KYODO NEWS)韓国語翻訳版を中心に-」

www.kci.go.kr

2022年1月3日note記事を修正、再投稿.

*1:p.92

*2:pp.92-103