韓国語にもキャラっぽい言葉遣いがある/アニメキャラクターが使用する日韓の「キャラ語尾」に関する研究
目次
フィクションにだけ存在する日本語独特の語尾
日本のアニメには、セリフの語尾が特徴的なキャラクターが数多く登場します。
「~にゃん」といった、すでにある程度共有されている語尾もあれば、キャラクターのアイデンティティを表現する意図で作者によって創作されることもあります。
今回はこのような日本のアニメのキャラクターの性格を表現する語尾が、韓国語吹き替え版ではどのように翻訳されているのかを調査した論文を紹介します。
共有する論文:郭銀心 「アニメキャラクターが使用する日韓の「キャラ語尾」に関する研究ー日本語原作版と韓国語ダビング版の比較を中心に」
語尾の特徴のパターン
この論文は、日本原作のアニメを対象に、その登場キャラクターが使うキャラ語尾について研究しました。原作で使われたキャラ語尾と韓国吹き替え版で翻訳された語尾の比較を通じて、セリフ翻訳の過程でどんなキャラ語尾が使われて、どのような戦略で選ばれたのかを分析しています。
これと合わせて、日韓のキャラ語尾の文法的特徴についても調査されました。調査対象作品は次の通りです。
調査した結果、以下のことが明らかになりました。日本語原作で使われているキャラ語尾は、以下の4種類に分類可能です。
これに対して、韓国吹き替え版では次の4つに分類できます。
このように韓国語版では、翻訳の過程で新しい韓国語のキャラ語尾が多く誕生していることが分かります。
論文の筆者は、今回の調査対象作品とは別で、韓国内で製作されたアニメのうち動物のキャラ語尾を使うキャラクターを探したが、見つけられなかったと述べました。
今回の調査によって、韓国のアニメ視聴者は韓国語吹き替え版を通して、様々なキャラ語尾に触れていることが明らかになりました。ところが、実際に韓国のアニメ視聴者は、このような翻訳の過程で誕生したキャラ語尾に対してどのように感じているのかという疑問が残りました。このようなキャラ語尾にに対する韓国の視聴者の反応を調べることが今後の課題です。
日常生活で目にする韓国のキャラ語尾
いろんな韓国語に触れていると日本語と同じように、現実にこうやって話す人はいないけれども愛嬌として語尾に特徴を出している表現を見かけます。1番よく見かけるものは、動物の名前や鳴き声をもじったものです。
上の写真は、私が実際に韓国でチキンを出前したときに受け取ったパッケージです。このように、韓国のチキン屋で使われていたシールにもキャラのイラストと独特の語尾を使った顧客へのメッセージが書かれていました。鶏を意味する닭と丁寧な語尾の습니다を掛けたキャラ語尾で可愛らしさが感じられます。
このシールの場合は今回の論文で扱われたセリフと違い、文字で表現されたキャラ語尾で、発音だけではキャラ語尾の意図が伝わりにくいタイプです。
このように、意外と韓国語にもキャラっぽい言葉遣いが使われていると分かります。韓国語学習者の立場から見ると、このような語彙を文化教育のひとつとして学びながら擬声語や昔の言葉遣いなどの難しく感じる学習項目と関連できたら面白そうだな思いました。
参照論文
郭銀心 「アニメキャラクターが使用する日韓の「キャラ語尾」に関する研究ー日本語原作版と韓国語ダビング版の比較を中心に」 『日本語学研究』第58集、韓国日本語学会、2018年、pp. 5 - 26
2022年2月2日のnote記事を修正、再投稿.