日本人のツッコミ方と韓国人のツッコミ方 /非難の表現方式
目次
ボケ担当とツッコミ担当
あなたはもし、予想外にも友人が人数に対して食べきれない量のポテトチップスの袋をパーティー開けし始めた時、なんと声をかけますか?
今回は、仲が良い友人との日常会話において、どのようなツッコミで相手の逸脱行為を牽制するのか、日本語話者グループと韓国語話者グループを観察してみた論文を紹介します。
共有する論文:イム・シウン「非難の表現方式―日韓話者の比較」
え?そんなガチで袋を開けるの?(確認)
この論文は、相手を咎める時に日本語と韓国語の話者がどのように表現するのかを実際の日常会話を調べて、韓国人と日本人の表現方法の表れ方を分析しました。研究目的は、親しい友人との日常会話を対象に会話中、相手の逸脱行為に対してどのような表現をよく使うのかを具体的に調べることです。
調査では、同じ大学院の研究室に所属する3人の学生グループの会話を4つ集めました。参加者は、20代半ばから30代半ばまでの年齢でグループ内のメンバーは、仲が良い関係です。会話は、休憩室や参加者の部屋で行われ、机を囲み飲食しながら、自由に喋る場面を40分から50分ほど録音されました。
発話の類型は、先行研究をもとに以下の7つに分類されました。
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否定的評価
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問い詰める
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確認
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指摘、描写
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否認、否定、禁止
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共感しない、無理解
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マイナス感情の表出
調査の結果、以下のことが明らかになりました。
論文の筆者は、このように相手を咎める行為が時には笑いを生み出す役割もしたことから、相手を咎める行為を通じて、相手が社会的な規範から逸脱することを規制し秩序を保つようにしていると考察しました。
最後に課題として、このような咎める行為が会話の中でどんな役割をするのかを調べるために、より一層、データを集めて調べるべきだとしました。
秩序を保つだけでなく周囲への配慮もあるのでは
日本では確認の方法をとって、韓国では指摘の方法をとるという違いがでてきた点が、日韓の性格の違いが現れたようで興味深い結果になりました。韓国語では「非難」という言葉が使われていますが、仲が良い間柄での会話を対象にしているため日本語では「ツッコミ」くらいのニュアンスで理解するのが近いでしょう。
記録された会話文を見ても、ケンカが起こった様子はありません。そうなると、相手を咎めるといっても何か強い意味合いがあるというよりは、相手や周囲への気遣いの違いが現れたのだろうと思います。論文では類型とその量的な分析に留まりました。
しかし、もしその表現方法をとった意図まで分析ができたら、日本人韓国語学習者にとって会話する時の参考になり、自然な表現を使ったスピーキング能力向上に役立てられただろうと、物足りなさが残りました。
参照論文
イム・シウン「非難の表現方式―日韓話者の比較」『日本研究』65巻0号、韓国外国語大学日本研究所、2015年、pp.351-373
임시은「비난의 표현방식 -한일 화자의 비교-」『일본연구』65권0호, 한국외국어대학교 일본연구소, 2015년, pp.351-373
2022年2月1日note記事を修正、再投稿.
*1:p.370