韓国映画で登場する比喩表現はどのように日本語へ翻訳されるのか /韓日翻訳のメタファーの様相に関する一考察
目次
字幕派?吹き替え派?
海外映画を見る時に、吹き替えと字幕のどちらを選びますか。それぞれ長所と短所がありますが、字幕の特徴は短い文章で登場人物が何を話しているのかを伝えるのが主な役割です。
今回は字幕翻訳に注目して、その中の比喩表現を日本語ではどのように翻訳しているのか調査した論文を紹介します。
共有する論文:董素賢「韓日翻訳のメタファーの様相に関する一考察」
原文に忠実な翻訳と原文を解釈した翻訳
この論文では、翻訳テキストで使われている慣用語表現における概念的隠喩の様子を調べました。研究対象を韓国映画のセリフが日本語字幕に翻訳されている例の中から、韓国の慣用表現が日本語に訳されている文にしました。
この論文の目的は、実例調査を通じて、韓国語と日本語の翻訳過程における概念化の構造を明らかにして、日韓の慣用表現の知識がどのように反映されているのかを確認することです。
映画の字幕翻訳は、視聴者が字幕を読むのにかかる時間的制約だけでなく、字幕が画面に表示されるための空間的な制約がある作業です。翻訳方法としては、主に2つの方法があります。
ひとつ目は、原文の構造を忠実に合わせて訳す方法。ふたつ目は、原文と翻訳文の意味を解釈して、創造的に訳す方法です。字幕翻訳において隠喩の使用は、文字通りの表現では伝えきれない意味を簡潔に視聴者に伝えることが期待されます。慣用表現の隠喩の翻訳は、それぞれの言語の隠喩が表現するものに関する知識が必要になります。
韓国映画の日本語字幕翻訳の過程で起こりうる隠喩を使った翻訳の類型は、以下の5通りが考えられます。
論文は、韓日翻訳において、隠喩表現を翻訳する時におこる表現方式の違いや特徴について考察することが目的であるため、韓国語で隠喩表現が使われていない④⑤を除外した➀②③のケースを扱いました。
各ケースを分析した結果は以下の通りです。
論文の筆者は、今回考察した慣用表現の中の隠喩は効率的な翻訳戦略のひとつだとし、この点についた研究は翻訳過程と結果に現れる言語的・非言語的特徴を分析する上で参考になると述べました。
翻訳する時に悩ましい比喩表現
比喩表現は、どの言語にもある普遍的なものも多いですが、やはりその言語の文化が表れます。そのため、ただそのまま翻訳しただけでは何を言いたいのか分からないとんちんかんなセリフになってしまいます。
論文では、このようなセリフがどのように翻訳されているのか分析したものですが、③に当たる、韓国語の比喩表現が別の日本語の比喩表現に翻訳されたケースがあまり無かったところをみると、基本的には原文に忠実に訳されていることがわかります。
このように、比喩表現や慣用的表現に注目しながら映画を見るのも面白そうですね。
参照論文
董素賢「韓日翻訳のメタファーの様相に関する一考察」『日語日文学研究』第96集、日語日文学研究学会、2016年、pp.3-27
2022年1月15日note記事を修正、再投稿.