日韓の文系論文を読む人

読んだそばから忘れるので……

アフレコを使ったスピーキング練習は効果的なのか?/吹き替えプロジェクトを活用した韓国語授業事例研究

 

自然な話し方を身に着けるために

どうして、外国語を勉強するのかを考えた時に多くの人は、喋れるようになることを目標にするでしょう。その言語のネイティブと変わらない、自然で流暢なコミュニケーションができるように勉強方法も工夫すると思います。単純に伝わればいい話し方から、相手にストレスを与えない自然な話し方にするために、映画やドラマのアフレコをしてみる方法が効果的であるかを実際に実験してみた論文を今回は、共有します。

 

共有する論文:ナ・ウンジュ、ナ・ウニョン「吹き替えプロジェクトを活用した韓国語授業事例研究―アメリカの大学生学習者の反応を中心に」

 

吹き替え動画制作プロジェクト

この研究ではコミュニケーション能力の面で、特に流暢さを重点的に向上させる方法のひとつとして、吹き替えプロジェクトを提案しています。また、プロジェクトに参加した学習者のリアクションを調査して、吹き替えプロジェクトがコミュニケーション能力を伸ばすのに効果的なのかについても、合わせて検証しています。

 

論文では、吹き替え(dubbing)を映画、放送などでフィルムや録画データの映像信号の映画を見ながら、それに相応するセリフや効果音楽なども挿入する製作過程のことだと、定義してます。学習者が、吹き替え作業を円滑に進めるためには、リスニングとスピーキングを繰り返しできることを優先しなければなりません。

 

プロジェクト参加対象者をアメリカの大学生で、外国語として韓国語を学んでいる三年生に設定しました。

 

吹き替え映像の制作が終わった後、学生たちに聞き取り調査をした結果、吹き替え作業によって、実際の生活で使われている韓国語に慣れ、自然な話し言葉を練習する手助けになったことが分かりました。学生たちにとって、使い慣れたデジタル媒体を利用して映像作品を再生産する吹き替えプロジェクトは、韓国語学習を次の段階に進めるために効果的だといえるでしょう。

 

学生たちがこのプロジェクトを通じて、最も向上された部分はスピーキング能力であり、その中でも特に、自然なトーンで話せるようになったと参加者は評価しました。

 

最後に論文の筆者は、以下のように吹き替えを活用した授業の研究について反省しました。

 

本稿は、設問調査とインタビューに依拠した学習者の反応についた研究で、吹き替えプロジェクトの具体的効率性を評価することに限界があった。しかし、韓国語教育でデジタルプログラムを利用した映像にアフレコを実際の学習方法としてやり方を用意し、学習者たちからポジティブな反応を得たことに意義がある。吹き替えプロジェクトを活用した協同学習や統合授業のような部分は今後の研究の課題に残しておく。*1

 

真似する対象をどう選ぶか

すでに完成された映像を使ったスピーキング練習は、状況とセリフをセットで覚えるのに適切な方法だと思います。また、プロの俳優さんの言い方は、人物の感情をトーンや話す速さで表現しながら聞き取りやすい、はきはきした声なので、学習者にとってマネしやすく感覚的覚えやすい勉強法だと思います。

 

題材も興味があるドラマなどを使えば、教材本の聞き取りやすさを優先した日常的でないCD音声よりも、楽しくできるようになったという実感を持って取り組みやすいと思います。

 

論文の中でも指摘されていたことですが、まだ議論の余地がある部分は、どんな題材を選ぶかという部分でしょう。論文の筆者は、学習者の興味関心を優先して、あえて作品選定にあまり関与しないようにしたとありますが、学習者の立場からしたら、何が適切なのか判断が難しいため、ある程度、あらかじめ教師が選んでおいてほしいという声も共感できます。

 

日本語でも演劇っぽい話し方があるように、現実的でない表現も映像作品の中に多くあります。ジャンルも膨大にあるので、やはり教師側で学習者が選びやすいように配慮する必要があると思います。今後は、この部分に関する研究が行われることを期待します。

 

参考論文

ナ・ウンジュ、ナ・ウニョン「吹き替えプロジェクトを活用した韓国語授業事例研究―アメリカの大学生学習者の反応を中心に」『人文社会21』9巻4号、アジア文学学術院、2018年、pp.965-976

나은주 , 나은영 「더빙 프로젝트를 활용한 한국어 수업 사례 연구-미국 대학생 학습자의 반응을 중심으로-」 『인문사회 21』 9권4호,아시아문화학술원, 2018년 ,pp.965-976

kiss.kstudy.com

2021年12月25日note記事を修正、再投稿.

*1:p.975