日韓の文系論文を読む人

読んだそばから忘れるので……

キャラクターから感じる懐かしさは、商品購入へ影響するのか /キャラクターのノスタルジアが購買意図に及ぼす影響

 

キャラクターの長寿化

日本では、アニメや漫画などの作品やハローキティのようなキャラクターが10周年、20周年を迎えることは珍しくなりました。また、リバイバルとして久しぶりに昔の作品が製作されています。このような長く存在しているキャラクターや作品を購入する人たちは、主に大人たちでしょう。もともとは、子供向けだったとしても、当時の子どもたちが大人になり再び、懐かしさとともに親しむ消費行動は、キャラクターを長寿化させてくれます。

 

今回は、このような長くいるキャラクターを大人が購入する時に、懐かしさはどのように影響をするのかについて、韓国の事例をもとに調査した論文を紹介します。

 

共有する論文:イ・ジュニョン、イ・ホベ「キャラクターのノスタルジアが購買意図に及ぼす影響:自負心の媒介評価と寂しさの調節効果を中心に」

 

過去をポジティブなものとして思い出させてくれるノスタルジア

キャラクター商品は、子どものものでなく、大人が積極的に愛好することも当たり前になりました。このような人たちは、自分が子どもの頃から存在するキャラクターを好むことも特徴の1つです。


論文は、新しいトレンドに合わせて開発されたキャラクターよりも、昔から存在してきたキャラクターの再登場が、人々に好感を持たせ、購入へ繋ぐことができる理由を、大人がもつ童心に対したノスタルジアの側面から調べていきます。

 

ノスタルジアとは、過去に対する感性的な熱望だと定義されています。もともとは、苦痛と悲しみを意味したが、現在は、過去に対する肯定的な感情と関連しています。過去への回想によって感じる安らぎは、当時は幸か不幸かに関わらず、肯定的な感情を呼び、困難な状況にある現在を慰めてくれます。

 

ノスタルジアの機能は、以下の2つが挙げられます。

 

ノスタルジアが自己肯定感を向上させる機能を通じて、自尊心を向上させて、肯定的自我連想を助けてくれる。
②社会的連結間を向上させ、個人の関係的能力を向上させ、社会とのつながりを感じさせる  *1

 

ノスタルジア感性をもっている製品の消費は、過去に対する回想を提供すると同時に、過去と実質的に続いているという感覚を持たせます。消費者はこのような感覚から、自分と一緒に喜び、楽しんでいた人々とのつながりが再び作られることを感じ、共有してた過去に繋がるのだと感じるのです。

 

調査における各仮説と分析結果は以下の通りです。

 

➀キャラクターノスタルジアが高いほど購買意図が高くなる
→幼年期時代から存在してきたキャラクターが、製品コラボされた時、該当製品がもつノスタルジア感性が購入意図に影響を与える。

②キャラクターノスタルジアが購買意図へ及ぼす正の影響は、寂しさが大きいほど、より大きくなる
→寂しさをより感じる人ほど、キャラクターノスタルジアが与える自己肯定感と社会的連結感をより大きく感じさせて、寂しさを紛らわすために、該当製品の購入意図がより大きくなったとみられる。

③キャラクター製品のノスタルジアが購買意図へ及ぼす影響は、自負心によって媒介されていく。
→自負心は、キャラクターノスタルジアを感じた消費者へ購入行動をより促進させる、フィードバックの役割をするとみられる

④自負心がキャラクターノスタルジアと購買意図の関係を媒介する場合、キャラクターノスタルジアは、寂しさが高いほど、自負心により肯定的影響を与える。
→キャラクターノスタルジアと購入意図間の関係を自負心が媒介する場合のキャラクターノスタルジアは、寂しさが高いほど、自負心に影響を及ぼすことを確認できなかった。

⑤自負心がキャラクターノスタルジアと購買意図に関係を媒介する場合、自負心を感じる人の中でも、寂しさが高い人ほど、購買意図がより肯定的影響を及ぼす
→媒介変数の自負心は寂しさが高いほど、より肯定的影響を及ぼすことを確認できなかった。 *2

 

上記の調査から、以下の3つが示されたと筆者は述べています。

 

➀キャラクターを好む大人たちの文化安定化とともに、キャラクター製品が大きい成功を取り入れている時点で、再登場する過去のキャラクターをもとに、ノスタルジア感性と一緒に繋がって、購入意図を誘発させることができる

②一人暮らしの増加と高い青年失業率、競争中心的社会など、現代の否定的社会環境により、友人、家族、幼年期に対した懐かしさをノスタルジアで表現され、この過程で社会的つながりの向上と自己肯定感を感じながら、肯定的感情を喚起させられる。

③消費者たちがキャラクターを通じて、ノスタルジアを感じる時、過去を肯定的に回想しながら、暖かい共同体的の感じを受け、これを自分に純粋な満足感を感じさせる自負心が、購入へつながるようにする媒介的役割をするとみられる *3

 

自分を慰めをくれるキャラクターの存在

論文の筆者も最後で述べているように、韓国の事例で調査を行ったため、文化的背景が異なる日本にもそのまま当てはまるかどうかは疑問があります。また、韓国には、キドルト族(키덜트캐족)という「kid+adult」の合成語があり、大人になっても子どもの頃の感性を持ち続ける人たちのことを指します。今、韓国のキャラクター産業に関した研究では、このような20-30代のキドルト族の消費行動が注目されているようです。

 

個人的に気になる点は、一人暮らしの増加などの韓国社会の変化が、20代30代の大人がキャラクターの購入する背景と関連があるのではという指摘です。この指摘は、日本の2000年代のキャラクター論議と近いように感じます。

 

00年代のキャラクター論では、ストレス社会に生きる大人たちが癒しを求めて、たれぱんだ等のキャラクターを愛好するという指摘が主流でした。日本では、キャラクターの図像や設定そのものに癒しを見出しましたが、もしかしたら韓国では、過去の回想を通じて、癒しを与えてくれる存在に昔ながらのキャラクターが選ばれているのではないかと思います。

 

参照論文

イ・ジュニョン、イ・ホベ「キャラクターのノスタルジアが購買意図に及ぼす影響:自負心の媒介評価と寂しさの調節効果を中心に」『商品学研究 第36巻3号』2018年、pp.67-80
이준영,이호배 「캐릭터 노스탤지어가 구매의도에 미치는 영향: 자부심의 매개효과와 외로움의 조절효과를 중심으로」, 2018년, pp.67-80

www.kci.go.kr

2021年8月14日note記事を修正、再投稿.

*1:p.69

*2:pp.72-73、pp.76

*3:pp.76